“ 」朴斎は兄富卿(ふけい)を前導者として榛軒に推薦したのである。此年十月に榛軒は正寧に扈随して福山に往くこととなつた。経籍訪古志に「酌源堂亦蔵此本、紙墨頗精」と云つてあるのが即後者で、榛軒の詩中に斥(さ)す所である。此の変改せられた北宋槧本(ざんほん)が躋寿館に一部、伊沢氏の酌源堂に一部あつた。既にして人あつて古版首行(しゆぎやう)の「太平聖恵方」の五字を削り去り、単行本として市(いち)に上(のぼ)せた。 ”